第三話 病気を理解する…統合失調症

統合失調症はどのような病気ですか?

統合失調症は脳の神経の働きに障害がでる病気です。人間は様々な外界からの刺激の中で生きており、こうした色々な情報を整理して思考や行動をひとつの方向に「統合」することが脳の大切な機能のひとつになります。統合失調症ではこのバランスが崩れ、知覚・思考・感情・意思(意欲)といった精神の働きが円滑に行われなくなります。この病気は思春期から青年期に発病するケースがほとんどで、人口の約0.8%、つまり100人から120人にひとりが発病すると言われており、決してまれな病気ではありません。

症状はどのようなものがありますか?

・ 実際には無い自分の悪口などが聞こえてくる「幻聴」
・ あり得ないことを現実と思いこんでしまう「妄想」
・ まとまりのない話や不可解な返答をしたりする「思考の混乱」
・ 些細なことで怒ったり、取り乱したりする「感情の不安定」
・ 周りの出来事に無関心になる「感情鈍麻」
・ 気が散りやすく集中できない「注意・集中力の欠如」
・ 物事にやる気がわかない「意欲低下」

上記の様な症状等があります。統合失調症を発病してこうした症状が出現すると勉強や仕事など、まとまった作業を行うことが困難になります。

どのような治療を行うのでしょうか?

基本は「抗精神病薬」と言われる薬を使った薬物療法です。この薬は脳の神経伝達物質(主にドーパミン)に作用して、脳の神経の働き(機能)を調整すると言われています。薬物療法に加えて症状の回復や程度に応じた精神療法やリハビリテーションが行われます。リハビリテーションはいわゆる急性期を過ぎた後に行われることが多く、作業療法やレクリエーション、生活技能訓練(SST)などがあります。

簡単に治るものでしょうか?

統合失調症は慢性化しやすく、再発しやすい病気と考えられています。しかし、適切な治療と療養を行えば、十分有効な治療効果を上げることができる病気です。この病気の経過は人によって様々で、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら徐々に回復していくというパターンが多いようです。

どのような人がこの病気にかかりやすいでしょうか?

生まれながらの素因など「なりやすさ」を持った人が内外のストレスにさらされた時に発病するという考え方があります(脆弱性モデル)。この「なりやすさ」についてはその人の持って生まれた素質や発達の過程で脳に生じた損傷の影響などが調査されていますが、まだ十分には解明されていません。この病気は複雑な要因が絡み合って発病します。育て方や家庭環境が原因で病気になるわけではありません。

たくさん薬を飲まなければなりませんか?

従来の定型抗精神病薬という薬は、パーキンソン症状や便秘等といった不快な副作用が多くみられたため、いわゆる副作用止めの薬も併用されることが多かったようです。現在主流になっている非定型抗精神病薬と言われる新しい薬は、そのような副作用が少なく以前に比べて少ない数の薬で治療が可能となっています。しかし、必要な時に必要十分量の薬を飲むことは再発防止に不可欠だと思います。

薬の副作用について教えてください。

抗精神病薬の副作用としては以下のものが知られています。
・手や体が震える、筋肉がこわばって動作がぎこちなくなる、体が落ち着かずじっと座っていられない。
・眠気が強い、体がだるい、頭がボーッとする。
・便秘・尿が出にくい、口が渇く。
・性欲減退、月経不順、乳汁分泌。
・体重増加、血糖値の上昇。

これらの副作用は全ての人に必ず出るわけではなく、また副作用には個人差があり、同じ薬を同じ量を飲んでも出現する人としない人がいます。

病気にならないためにはどのようにしたらいいですか?

発病に関しては先に述べた通り、複雑な要因が絡み合って発病すると考えられているため「こうすれば病気にならない」というものではないようです。ただし、発病後の経過には家族の関与が大きく影響しているらしいという研究報告があります。

統合失調症を早期に発見する方法はありますか?

統合失調症の急性期に先立って前ぶれの時期(前駆期)がみられることがあります。この時期の症状としては、不眠や軽い抑うつ気分やこれまでにない体の不調感・違和感や、集中力の低下、周囲に対し過敏になる等があります。病気にかかるとこのような心身の不調や変調に苦悩し、引きこもったり学校や職場を休んだりします。従って、思春期・青年期の人が急に性格が変わるとか、行動上の変化がみられるときには心の病ではないかと疑いを持つことが求められます。

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